ひのまるキッズ関東大会での「気づき」と「感謝」

先週末、横須賀で開催したひのまるキッズ関東大会。
前日の練習会から、懇親会、そして、大会当日の
試合もイベントも、そしてブースも大盛況でした。
参加してくださった選手親子、指導者の皆さん、
そして、大会運営に携わっていただいた
役員、係員、協賛社の皆さん、本当にありがとうございました。

大会前日には地元の中学生約180人が来て、
畳敷きから、幕張り、机やイスの準備と、
先生方の統率のもと、素晴らしい働きで
設営のお手伝いをしてくれました。
いつもは屈強な大学生や高校生にやってもらうことが多い畳敷き、
体力的にも、中学生では大変だろうなぁと思っていましたが、
そんな心配はご無用。あっという間に、約600畳を敷き終わり、
設営後は、全員で練習会。

髙藤直寿
(写真:大会当日、柔道クリニックで指導する髙藤直寿先生)

練習会では、ひのまるキッズの講師として来ていただいた
髙藤直寿選手が特別指導をしてくださり、大盛況でした。
髙藤選手は、26日から始まるアジア選手権の直前にも関わらず、
ひのまるキッズの小学生練習会、そして、中学生の練習会と、
嫌な顔ひとつ見せずに一生懸命指導してくださり、
子供たちも大喜びの様子でした。

田知本遥
(写真:子供たちに手取り足取り指導をする田知本遥先生)

大会当日には、皆さんご存知のように、
髙藤選手に加え、田知本愛・遥姉妹、羽賀龍之介選手、王子谷剛志選手と
日本のトップ現役選手がイベント講師として勢揃い。
試合を行ったメインアリーナから少し離れたサブアリーナで行った
柔道クリニック、受け身・打ち込みコンテスト、えび・しぼりレースは
いずれも大盛況。
お父さん、お母さんも興奮気味に、
子供たちが指導してもらっている様子を
ビデオや携帯で撮影していました。

田知本愛
(写真:受け身コンテストで子供にアドバイスする田知本愛先生)

主催者として嬉しかったのは、
講師の先生(選手)たち自身もとても楽しそうに
子供たちと接していたこと。

そして、感心したのは選手たちのホスピタリティの素晴らしさです。

ひのまるキッズの大会講師は、正直言ってキツイです。
9時過ぎの開会式であいさつをしていただき、
試合開始とほぼ同時に、イベントスタート。
高学年の柔道クリニック、受け身コンテスト、打ち込みコンテスト、
低学年の柔道クリニック、えび・しぼりレースと続き、
最後は、表彰式でのプレゼンター。
4時過ぎの閉会式(表彰式)まで、
これでもか!ってくらいに盛りだくさんです。

王子谷剛志
(写真:しぼりレースに王子谷剛志先生が参加し子供とデッドヒート!)

ふつうの柔道教室であれば、
せいぜい3~4時間の拘束時間だと思いますが、
ひのまるキッズはたっぷり6~7時間。
当然、講師の先生方と子供たちが触れ合う密度(?)は、
比較にならないほどだと思います。

そんなこともあり、講師づきのスタッフは、
当然、講師の負担をできるだけ減らそうと、
子供たちには申し訳ないのですが、イベントが終わると、
次のイベントまで休んでいただくために、
心を鬼にして、サインや写真を断り、
講師の先生を、迅速に控室に移動させようとします。

今回も、最初はそうしていましたが、
子供たちのサインや写真を断っている姿を見ていた先生方のほうから、
「せっかくだからサイン会をやりましょうよ。
できる限り、対応しますよ」という申し出があり、
急きょ、イベントの合間の時間を利用し、
サイン会を行うことになったのです。

その気持ちが嬉しいじゃありませんか!

羽賀龍之介01
(写真:子供たちのサインに応じる羽賀龍之介先生)

「ありがとう」という感謝の心
「私がします」という奉仕の心
「おかげさま」という謙譲の心

関東大会は、私にとっても非常に“気づき”のある大会でした。

講師の先生方はもちろんのこと、
関東大会にかかわっていただいた、
すべての皆さんに心より「感謝」します。

ひのまるキッズ事務局
林 毅

子供との時間、家族の時間を大切に!

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『ひのまるキッズ北信越大会』でのこと。

前にもお話ししましたが、
『ひのまるキッズ』には年間数回、
各地の大会に遠征して出場してくださる、
いわゆる常連の親子がたくさんいらっしゃいます。

北信越大会にも、
北海道のHさん親子や岐阜のKさん親子が来てくださいました。
ともに、現在、中学生のお兄ちゃんお姉ちゃんが小学生の頃から
出場してくださっており、今大会にもお兄ちゃんお姉ちゃんも
一緒に来ていて、わざわざ挨拶にも来てくれました。

「よその子とゴーヤは育つのが早い」(by博多華丸・大吉)と言いますが、
他人の子供の成長は、本当に早いもので、
1~2年見なかっただけで、大きくなっていて驚きます。
柔道をやっている男の子なんて、
少しの間に身長は追い越され、身体はたくましくなり、
顔つきも大人びていて、「別人!?」と思うことも少なくありません。
でも、そんな成長した姿が見られることも、
ひのまるキッズをやっていて、
嬉しいことのひとつです。

そして、もう一つ、嬉しかったのが、
友達の輪の広がりです。

学年・階級が同じ北海道のH君と岐阜のK君は、
過去に何回か一緒になった前日練習会や試合を通して、
すっかり仲のいい友達になっており、
北信越大会で、久々に会えることを楽しみにしていたそうです。
普段からLINEでもやりとりしており、
今回も、会場に向かう車の中で、
「いまどこ?」とお互いの状況を確認しあっていたんだそうです。

今回の大会では、順調に勝ち上がれば
準々決勝で対戦するということで、
「そこまで頑張って、試合しよう」と
二人で激励し合っていたそうです。
残念ながら、二人の対戦は実現しませんでしたが、
試合後、笑顔で話している様子を見て、
柔道の良さ、『ひのまるキッズ』の良さを
また一つ発見できたような気がして
とてもうれしくなりました。

二人とも6年生。
もしかしたら、これが最後の
『ひのまるキッズ』になるかもしれません。
K君のお母さんは、家族で過ごした
『ひのまるキッズ』の思い出を、
とても楽しそうに話してくれました。

「最初は、お兄ちゃんが友達を作るのが下手だったので、
なんとか友達ができるようにならないかと思って出場してみたんです。
そしたら、前日の練習会や試合を通して柔道の友達ができて、
子供たちにとっては、本当にいい経験になったと思います。
子供たち、『ひのまるキッズ』をとても楽しみにしていたんですよ」

おそらく、お子さんたちにとっても、
お父さんお母さんと一緒に『ひのまるキッズ』に出たこと。
いろいろなところを旅したことは、
大切な思い出、一生の宝物になったのではないかと思います。

自分の子供が成人して、つくづく思うことは、
「子供と時間を共有できる期間というのは本当に短い」
ということです。

『光陰矢の如し』
月日の過ぎるのは、本当に早いものです。
皆さんも、子供との時間、家族の時間を
大切にしてください。

スポーツひのまるキッズ事務局
林 毅

柔道が本当に大好きだった髙木長之助先生、心よりご冥福をお祈りします。

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私の尊敬する柔道家の一人、
髙木長之助先生が昨日12月6日の夜、急逝されました。

ほんの数日前、グランドスラム東京の会場で
お見かけしたときは、元気なご様子だったのに。
本当に、残念でなりません。

私が柔道雑誌の編集者だった20数年前、
日大の監督をされていた先生には、
何度もお話を聞いていますが、その時は、
監督といち記者という関係で、
「豪快な先生だなぁ」
くらいの印象しかありませんでした。
その後、うちの会社が学柔連の代理店をし、
私が担当としていろいろな業務を、
当時常任理事だった先生に相談するようになったことで、
お会いする機会、お話する機会も増えました。

何度かお叱りを受けたこともありましたが、
先生がそのことをあとに引きずるようなことはなく、
次にお会いしたときには、
あの包み込むような笑顔で話しかけてくれました。

数年前、食事をご一緒したとき、
お寿司をご馳走になったうえに、
帰りにお土産までくださったことがありました。
お土産は、先生が手打ちしたお蕎麦でした。
信州生まれで、こと蕎麦に関しては一家言ある私ですが、
先生の打ったお蕎麦は
お世辞でなく本当に美味しかったです。
つい先日も、家内と
「前にいただいた手打ちのお蕎麦、美味しかったね」
という話をしたばかりでした。

昨年、孫弟子である原沢久喜選手が
全日本選手権で優勝したとき、
髙木先生が大きな身体を震わせて泣いている姿を見て、
もらい泣きしてしまったことも思い出します。

昨今の柔道に危機感を抱き、
自ら「押し掛け出前柔道教室」と言って
道場や学校に柔道を教えに行ったり、
アンテナを様々な分野に広げ、FBで情報をシェアし、
いろいろなメッセージを発信してくれていました。
私たちに学ぶことの大切さを訴えるとともに、
学ぶ機会を与えてくれていたように思います。
柔道を良くしようと本気で取り組んでいた貴重な柔道家であり、
柔道界において本当に必要な方だったと思います。

「柔道好きでは誰にも負けない」と公言し、
先生のことを知る誰もが
「先生は柔道大好きだから」と口を揃えるほど、
本当に柔道好きだった髙木先生。

先生、68歳は、早すぎますよ。
もっといろいろなお話をお聞きしたかったし、
ひのまるキッズの大会にも来ていただきたかったし、
もっともっと元気で活躍していただきたかった。

そして、もう一度、あの絶品のお蕎麦を
食べさせていただきたかった。

心からご冥福をお祈りします。

合掌

※写真と記事は、今年の全日本選手権のプログラムの特集
『全日本選手権を彩った名選手』の抜粋。
私が先生にした取材は、これが最後となりました。

いまから、ここから、ひのまる社長の独り言(その172:あきらめないことを、あきらめない)

 

好きとはいえそれではお金が稼げないことはよくあることで、その場合はちゃんと他でお金を稼いで好きなことを続けるべきだと思う。好きなことから稼ぐというのに固執してジリ貧になっている人をスポーツ界ではよく見かける。

最近、FB友達になっていただいた柔道家の投稿にあった陸上の為末選手の言葉を見たときふと頭によぎった言葉が、

武士(ぶし)は食わねど高楊枝(たかようじ)

意味は・・
武士は貧しくて食事ができなくても、あたかも食べたかのように楊枝を使って見せる。【武士の清貧や体面を重んじる気風】をいう。また、【やせがまんすること】にもいう。

ということ。

確かに、自分の好きなことで稼ぐということは大変なことです。ただ、稼ぐということは理不尽なことをいかに受け止めていくかという我慢比べみたいなものにも通じると思います。それなら、好きなことならその理不尽なことは『好きなことだから』という理由で我慢できる確率は明らかに高くなり、逆に好きなことだから、稼ぐことができた時の喜びは並大抵なものではないと確認しています。

もちろん、為末さんの言葉は、武士は食わねど・・のように、やせがまんをしてじり貧になるくらいなら固執せず、他のことをやった方が良いということで、決して間違ってないと思います。

そして、まさにこだわり続けて、じり貧になりかけている代表として改めて宣言します。

あきらめないことを、あきらめないで、必ず夢を実現させます!!!

いまから、ここから、『スポーツで飯を喰う』必ず成功させます!!

未来への挑戦~成功への道のりは確実に見えています。

永瀬義規

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メダリスト誕生の裏にある、選手とコーチの信頼関係

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各地でリオ五輪の祝賀会や報告会が行われていますが、
昨日は、東海大学で、同大学出身(在学&OB・OG)の
リオ五輪メダリスト(柔道と競泳)とコーチ陣による、
「なぜ日本が世界で勝てたのか、強化の裏側を知る」
というテーマの報告会(トークセッション)が行なわれたので、
聞きに行ってきました。

この報告会は、東海大学の在学生や、地域住民の方々に対して、
入場無料で行なわれたもので、広い会場には、
近隣の子供たちや親子連れ、お年寄りの方々も
たくさん来られていました。

まず、リオ五輪日本選手団の副団長も務めた
山下泰裕東海大副学長の選手団代表挨拶があり、
トークセッションがスタート。

柔道の
井上康生先生(男子代表監督)、
塚田真希先生(女子代表コーチ)、
高藤直寿選手(男子60㎏級銅メダリスト)
ベイカー茉秋選手(男子90㎏級金メダリスト)
羽賀龍之介選手(男子100㎏級銅メダリスト)
田知本遥選手(女子70㎏級金メダリスト)

競泳の
加藤健志先生(代表コーチ)
金藤理絵選手(競泳女子200m平泳ぎ金メダリスト)

が、司会者からの質問に
それぞれが答えていくという形で行われました。

井上監督や塚田コーチ、加藤コーチのお話も非常に興味深く、
「なるほど」と感じ入るものでしたが、
やはり、面白かったのは選手たちの話。

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選手たちには、
1)挫折、失敗をどのように乗り越えてきたのか?
2)リオ五輪において、緊張や不安にどのように打ち克ったのか?
3)夢や挑戦について、大学生や小中学生へのアドバイス・メッセージを。
という三つの質問がされました。

全部は、とても紹介できないので、
ユニークなネタと、すごく感心したものを少しだけ紹介します。

会場がア然とする、ユニークなエピソードを披露したのはベイカー選手。
挫折、失敗をどのように乗り越えてきたのか? の質問に、
「挫折はないです。けっこう順調に来ていて。正直、なくてすみません」
と答えて会場をどよめかせ、
オリンピックの最終選考会で負けたことは? という司会者の突っ込みにも、
「いま思えば、オリンピックで金メダルを獲れたので、あれもよかったのかなと。
わりとポジティブなので、普通の人が挫折と思うようなこともそう思わないんですよ」
と大物ぶりを発揮。

さらに、
リオ五輪において、緊張や不安にどのように打ち克ったのか?の質問にも、
「緊張はなかったです。決勝前に吐いたのですが、
それは緊張のせいではなくて、決勝まで時間があると思って
おにぎり2個とバナナ1本食べたのですが、
決勝の時間が早まったために消化できてなくて、このまま5分戦ったら
出てきちゃうかもと思って、吐いてスッキリしました」とのこと。

それに関して、井上監督から、
「ウォーミングアップエリアの真ん中でイスに座り、
他の選手がアップしたり精神集中する横で、ピクニックみたいに
おにぎりやバナナをいくつも置いて食べているベイカーの姿には、
他の選手も驚いていたが、すごいオーラだった」
という仰天エピソードも飛び出し、会場は大爆笑でした。

ちなみに、イスに座っていたのは、
「前日のアップで腰を痛めていて、
イスに座っていると少し楽だったからで、
べつに堂々と食べたかったわけではないんです」
とベイカー選手は弁解していました。

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感心したのは、競泳の金藤選手の話と
大学時代から金藤選手を指導する加藤コーチの話。

加藤コーチは、金藤選手を初めて見たときから
「世界一になれる選手」と才能を見出していたのですが、
当の本人は、自分に自信を持って、
「一番を獲ります!」と口にするような選手ではなく、
地道に、耐え忍ぶようなタイプだったそうです。

金藤選手は、ロンドン五輪を目指していた2010年に腰を痛め、
その後も結果が出ずに「やめたい」という気持ちが強くなり、
加藤コーチに「やめさせてください」と伝えたことがあったそうです。
その時、加藤コーチに
「お前の気持ちなんてどうでもいいんだ。
周りの人はお前のことを考えて、
やったほうがいいと言っているのに、
なぜ、お前は自分のことしか考えられないんだ」
と言われ、納得する気持ちも少しあったため
「わかりました、やればいいんでしょ!」と
半分キレながら競技を続けたそうです。

加藤コーチは、
「親の子育てとコーチの選手育てはたぶん同じで、
どういう場面においても、ボクは金藤理絵を信じ切らないといけない。
選手って金メダルを獲りたいという気持ちはあっても、
獲るためにやらなければいけないことで、やりたくないことがあると思うんですね。
それに怖さや不安もある。
そこでボクが負けちゃいけないという気持ちはいつもありましたね。
(指導者が)選手本人より本人のことを信じ続けなければ、
将来はないんじゃないかと思うんです。
金藤は多少イヤだったみたいですけど、ボクは頑張りました」
と会場を笑わせましたが、
二人の師弟関係には感動さえ覚えました。

リオ五輪直後、井上男子監督の「選手への信頼」が話題になりました。
井上監督は、オリンピック前、報道陣にメダル予想を聞かれても、
「全員が金メダルです」としか答えませんでした。
「選手全員が金メダルを目指して頑張っているのに、
私が金メダル以外の予想をすることはありえません」と。
そして、全員がメダル獲得の快挙を成し遂げました。

指導者と選手の信頼関係。
今回のトークセッションを聞き、
その重要性を改めて感じたのでした。

それにしても、地域住民の皆さんを対象にした
こういうイベントは、ホントに素晴らしい。
親子で来られている方も多かったのですが、
子供たちが大きな夢を持つきっかけになるのではないかと思います。

ひのまるキッズ事務局
林 毅

文武一道 ~学柔連の取り組み~

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先日、全日本学生柔道連盟の教養講座を聞いてきました。
非常に興味深い内容でしたので、一部を紹介します。

今回、講義をしてくださったのは、筑波大学の菊幸一教授で、
テーマは「学生柔道とJudoの接点」~学生柔道のこれからのために~。

本来、学生柔道というのは、
「教育目的に適う柔道」=「人間教育としての柔道」
であるべきですが、それは建前(タテマエ)で、
実際には、世界(学校対抗)で勝利する柔道というのが
本音(ホンネ)となっています。

これには大学の財政基盤(授業料)の問題が大きく関わっており、
大学とすれば、「勝つことでメディアに取り上げられ、
目立つことで人気を集め、学生増加(収入の増加)につなげる」
という構図ができており、そのため、
学生柔道は特殊な勝利至上主義になっていると、菊教授は指摘します。
これは他のスポーツにおいても同様だと言えるでしょう。

でも、その特殊な勝利至上主義により、
大きな問題が起こってきています。

「勝利」を追い求めるあまり、
中学、高校でも柔道一筋、中等教育で学習すべきことを
きちんと修得しない、柔道だけ強い選手を大学にスカウトし、
そこでも、柔道だけをやらせる。
これでは、社会で通用する人間は育ちません。

かつてアメリカのアメフト界では、
才能ある高校生を大学に勧誘し、
アメフトだけをやらせていました。
大学は、アメフト名門大学として名前を上げ、
プロになる選手もたくさんいました。
しかし、プロになれなかった選手は、
大学で何も勉強していなかったため、
卒業することもできず、社会的廃人、
いわゆる「ソーシャルデス」となってしまい、
大きな社会問題となりました。

ちなみに、アメリカの大学が「入学しやすく卒業しづらい」という話は
聞いたことがあると思いますが、
実際、4割しか卒業できないのだそうです。

結果、一部のプロになれるような選手以外、
「ソーシャルデス」になってしまうようなスポーツはやらせたくない、
ということで、人気スポーツのアメフトを、
親がやらせなくなってしまったそうです。

NCAA(全米大学体育協会)は、すぐさま大学スポーツ改革に乗り出し、
大学に進学するためには、ある程度の学業成績がなくてはいけない、
大学でのシーズン中の練習時間を制限、
指定された単位数をしっかりとらなければ試合に出られない、
単に単位をとるだけでなく、
一定レベルのGPA(成績評価値)を超えないと試合に出られないなどの
規定を定めたのでした。

社会から尊敬されなければ、社会からも企業からも相手にされなくなる。

こうしたスポーツ改革により、
アメリカの大学において、トップアスリートは、
非常に尊敬される存在になってきていると言います。

学生柔道界も、今年度から
大会出場資格として、単位取得を義務化しました。
2013年の理事会で決定し、高校などにも通達。
今年度からの施行となりました。
日本においては、ほかの競技に先駆けての実施です。

これからは、柔道だけをやっていれば高校にも大学にも進学でき、
仕事にも就けるというわけにはいきません。
子供の頃に、勉強する習慣を身に付け、
高校でも、大学でも柔道以外のこともしっかりと学ぶ。

いま、学生柔道の推進していることは、
世界の学生スポーツの潮流の、
先端を行っていると言えます。

フランスにおいて、少年柔道が非常に盛んなのは、
柔道を教育だととらえているからだと言われています。
フランスの少年柔道は、競技力向上ではなく、
人間教育を行っているから人気があるのです。

よく文武両道と言われますが、
菊教授は「文武はひとつ」、「文武一道」と表現しました。
たしかに、このほうがしっくりくるような気がします。

一朝一夕にはいかないと思いますが、
学生柔道が始めたこのムーブメントを柔道界全体に広め、
親御さんたちが、「子供に柔道をさせたい」と
心から思うような環境を、指導者だけでなく、
柔道に関わる方々みんなで作っていかなければならないと思います。

ひのまるキッズ事務局
林 毅

東海大報告会で感じた、東京五輪に向けた新たな戦いの始まり

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昨日は、東海大学の全日本学生柔道優勝大会&リオ五輪報告会に
ご招待いただき、行ってきました。

東海大の優勝大会での優勝は、なんと21回目。
65回中21回、しかも実際に東海大が出場しているのは
第20回大会くらいからということなので
(第22回大会の3位が初ベスト4)、
その勝率の高さは驚異的と言えます。

私が柔道雑誌の編集部にいた20数年前、
昭和の終わりから平成の始めの頃は、
東の東海大、明治大、西の天理大、近畿大が4強。
それに続く日大、国士舘大、日体大、国際武道大、筑波大
といった大学が虎視眈々と4強を狙うという構図でした。
名選手も各大学に散らばっていて、
各大学それぞれにカラーというか、
戦い方やオーダーに特徴みたいなものもあって、
いま以上に目の離せない試合が多かったように思います。

最近は「王者・東海大に土をつけることはできるか!」
が最大の見どころですが、戦っている選手たちは毎年入れ替わっていくわけで、
毎年同じように強い選手ばかりが揃っているわけではありません。
そのなかを勝ち続けるというのは、傍から見ているのとは違い、
すごく難しいことだと思います。
昨年、決勝のあと、座り込んでいつまでも立ち上がれずに
泣きじゃくっていた東海大の選手の姿は、今もはっきりと覚えています。
7連覇もしているんだから、1回くらい負けても…
は選手たちにはないんだなぁとつくづく感じたものでした。
今年の優勝報告会が、オリンピックの関係で遅くなりましたが、
改めて、すごい偉業だなぁと感じるとともに、
学生柔道をさらに面白くするために、
日大、筑波大、国士舘大、天理大らの「打倒!東海大」に、
大いに期待をしたいと感じたのでした。

リオ五輪報告会も、やはり今の東海大の強さ、勢いを現していました。
いまさら言うまでもありませんが、
60kg級の髙藤直寿選手、90kg級のベイカー茉秋選手、
100kg級の羽賀龍之介選手、女子72kg級の田知本遥選手、
日本代表として出場した4選手すべてがメダルを獲得、
しかもベイカー選手と田知本選手は金メダル。

どの選手もオリンピック後は、テレビをはじめ、
いろんなところから引っ張りダコで、超多忙な日々を過ごしており、
「まったく練習ができていない」と口を揃えていましたが、
4年後の東京オリンピックには、意欲を見せているようでした。

東京五輪について聞かれ、羽賀選手は
「4年先を考えるのではなく、1年1年積み重ねていった結果として、
4年後、オリンピックに出場できるよう、これから一日一日を大切に、
頑張っていきたい」と話していましたが、
それが多くの選手の本音なんだと思います。

そして、報告会の後に記者に囲まれた田知本選手は、
「ロンドンからの4年間は、リオで金を獲ることだけを考え、
その後のことなんてまったく考えず、必死にやってきましたから、
いまは正直真っ白。これからまた、同じこと、いやそれ以上のことを
しなくてはいけないという覚悟はまだできていないです。
でも、日本に戻ってきたら、
皆さんの注目が『東京』なんだということをすごく感じているので、
今後については、もう少し考えてゆっくり答えを出したいと思います」
と穏やかな表情で語っていました。

田知本選手の「覚悟」という言葉に、
リオに懸けた思いが感じられ、
それだけ厳しい4年間を過ごしてきたんだなぁと
改めて、痛感しました。
おそらく、それはほかの選手たちも同様だと思います。
五輪に出場した選手、夢かなわなかった選手、
本当に、皆さんお疲れ様でした。

1か月半後には講道館杯があり、
ある意味、そこが東京オリンピックへの出発点、
新たな戦いの始まりと言えるかもしれません。
東京五輪を目指す、新しいスター選手の出現にも期待したいと思います。

ちなみに、その日はスポーツひのまるキッズ北信越大会。
講道館杯を見に行くことはできませんが、
富山で未来のオリンピック日本代表候補たちの熱戦を
しっかりと見たいと思っています!

ひのまるキッズ事務局 林

リオ五輪まで約2ヵ月! 『観戦ガイド』作っています。

今年の8月5日から21日まで、ブラジルの
リオデジャネイロで開催されるオリンピック。
さまざまな競技で、続々と代表選手が決まってきています。

女子バレーボールは最終予選の真最中。
韓国に敗れ、タイ戦でも絶太絶命の大ピンチまで追い詰められましたが、
なんとか逆転勝利で五輪出場に大きく一歩前進したようです。
残るはドミニカ、イタリア、オランダ戦ですが、
今日、ドミニカに勝てば、出場枠の4位がほぼ確定するようです。
なんとか頑張ってほしいと思います。

昨日も、トライアスロンの代表選手、
男子1名と女子3名が発表になりましたが、
現時点で約150人と6チームが代表に決まっています。
(6チームは、サッカー男子、バスケット女子、ホッケー女子、
7人制ラグビーの男女と水球男子)

開催まで80日を切り、徐々に、
少~しずつ気運が高まっていきているような気がします。

実は、私自身は今回が通算4回目となる
オリンピック観戦ガイドの制作にかかっており、
今週はライターさんやデザイナーさんとの打合せ、
さらに、広告の営業と大わらわ。
関わってくださる皆さんと打合せを重ね、
ムクムクと「やる気」と「緊張感」が高まってきています。

6月には全日本柔道の合宿取材にも行きますが、
柔道の情報に関して他誌よりも充実したものになるのは当然!
柔道以外に関しても、それぞれの競技に精通したライター陣に
原稿を依頼しておりますので、
相当充実したものができると確信しています。
オリンピックが「より面白く」見られる観戦ガイドを
作りたいと思いますので、もうしばらくお待ちください。

発売日は、7月28日。
発行元は、角川春樹事務所です。
乞うご期待!

あるときは柔道記者、あるときは編集者の
ひのまるキッズ事務局 林 毅

子どもの日の感動

図1

世間一般で言う「GWらしい過ごし方」をほぼすることなく
GWが終わってしまい、とくにGWロス的な気持ちのないまま
日常に戻っていますが、皆さんはいかがですか?

私が今年のGWで唯一、GWらしい過ごし方をしたのが、
子どもの日の全国少年柔道大会「観戦」でした。

「取材」では何度も行っている全国少年柔道大会。
現在、全日本男子監督を務める井上康生さんに、
初めて話を聞いたのもこの全国少年柔道大会でした。
たしか27年前の1989年、井上監督は小学5年生。
当時行なわれていた個人戦で優勝した井上少年の強さは、
まさに衝撃的なものでした。
試合後、「夢はオリンピックで金メダル」と言っていた井上少年は、
実際に金メダリストになり、いまや全日本の監督。
そう考えると、歳をとったなぁと痛感します。

昔の取材の話はさておき、今回はあくまで「観戦」。
以前に、ひのまるキッズでご招待させていただいた
大船渡の道場が出場するということで、
子どもたちに会いたいと思って来たのでした。

通い慣れた講道館。
考えてみると、8階の観覧席から試合を観たことは、
いままでほとんどありませんでした。
いつものように下(7階)で観るのでなく、
8階の観覧席(実際には立ち見)からの観戦というのも、
私にとってはとても新鮮で、
親御さんらと同じような気持ちになって観戦しました。

観覧席から観ていると、というより観覧席にいると、
当然ですが、お父さんやお母さんの生の声も聞こえてきます。
子どもたちの頑張っている姿を見て、
勝ち負けに関係なく涙するお母さん。
我が子の一挙手一投足に、一喜一憂しながら
大声で声援を送るお母さん。
胸の前で手を組み、心配そうに見つめるお母さん。

つい習慣で、そんなお母さんの一人に話を聞くと、
「予選リーグで負けちゃったけど、よく頑張っていました。
最初で最後かもしれないけど、全国に出られたというのは、
本当にいい思い出。子どもたちを褒めてあげたいです」
と、とても優しい表情で答えてくれました。

全国大会は不要という声もありますが、
「全国大会出場」という大きな目標を掲げ、
親子や友だちと、その目標に向かって努力することで、
子どもたちも、そして親御さんたちも
成長しているのではないかと思います。
やり過ぎによる弊害があることも確かですが、
今回、観覧席で観戦して感じたことは、
そういったマイナス要素よりプラス要素。
親子、仲間たちと頑張る姿の尊さです。
これは、指導者の努力によるところも大きいと思います。

試合が終わり、観覧席に戻ってきた我が子を笑顔で迎え、
頭をなで、抱きしめるお父さんお母さんの姿には、
ちょっと目頭が熱くなりました。

講道館を出るときは、
いつになくとても清々しい気分だったので、
そのまま神保町まで歩き、
前から気になっていた、
新潟名物の『タレかつ丼』を食べて帰りました。

というわけで、とてもいい1日でした。

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スポーツひのまるキッズ事務局
柔道記者でもある 林 毅

感動の全日本選手権。王子谷選手の闘いぶりにしびれた!

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ゴールデンウィークまっただ中、
皆さん楽しんでいますか?

今日は、こどもの日。
大学生の次女は、今日も1限から授業があるということで、
早々に行ってしまいました。
子供も20歳を超えると、
親父のことなんか相手にしてくれません。
寂しいものです…… (T_T)

さて、今さらではありますが、
4月29日の全日本選手権はご覧になりましたか?
今年も非常にいい試合の連続で、ホント、興奮しました。

そして、今年も「予想通り」にはいきませんでしたね。
大会プログラムを制作していることは
先日のブログでも書きましたが、
プログラム内で行なっている、識者による
「決勝進出者及び優勝者予想」。
私が記憶している限り、昨年まで7年以上
当たっていませんでした。
でも、今年の決勝予想「七戸vs原沢」で「原沢優勝」は、
かなり「堅い」と思っていただけに、
今大会の予想外の結果には、
改めて、全日本選手権で勝つことの難しさを痛感しました。

そんな予想はさておき、
2度目の王者となった王子谷選手の闘いぶりには、
正直、しびれました!

王子谷選手は、一昨年優勝してから、
全日本チャンピンのプレッシャーからか、
思うような闘いができなくなってしまい、
ここ一番の試合で勝てない日が続いていました。
大会の2週間前にインタビューしたときも、
まだ、立ち直っていない様子で、
会話にも元気が感じられませんでした。

それが、いざ本番では、持ち前の思い切りの良さが完全復活。
七戸選手との準決勝では大外刈、大外巻込を連発、
さらに上川選手との決勝でも、大外刈、支釣込足で完勝、
場内は大興奮でした。

なにより見ていて感動したのは、決勝・上川選手との攻防。
大外返を得意とする上川選手に対し、
王子谷選手は臆することなく大外刈で勝負を挑み、
1分15秒、豪快な大外刈で「技あり」を奪取。
上川選手の状態を見ても、あとは無理をせず、
時間を費やせば王子谷選手の優勝だなと、
思われたのでしたが、王子谷選手は、
その後も攻撃の手を緩めず、
返しを狙う上川選手に対し、
これでもかというくらい大外刈を連発。
守る気など一切なく、とにかく「一本」を狙って
攻め続ける王子谷選手の気魄は、
まさに「全日本王者」のものでした。

そして、準決勝の原沢選手との戦いで完全ガス欠になりながら、
最後まで必死の反撃を見せた上川選手の健闘にも
心打たれました。

ここ数年、重量級選手の充実とともに、
全日本選手権が本当に素晴らしい大会になってきていると思います。
加えて今大会では、制野兄弟、垣原選手、河原選手ら、
中量級選手の闘いぶりも
大会をより面白いものにしてくれました。

来年の話はまだ早いのですが、
今年のリオ五輪で金メダルを獲り、
73㎏級の大野選手や、81㎏級の永瀬選手、
100kg級の羽賀選手が全日本選手権に出場してくれれば、
来年はまさにドリームマッチ!
実現してほしいなぁ。

王子谷選手、おめでとう!

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ひのまるキッズ事務局
柔道記者でもある 林 毅