「柔道家」の品格

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全日本学生体重別団体優勝大会前日の10月24日、
大会会場のベイコム総合体育館の研修室で
全日本学生柔道連盟主催の教養講座が行われました。
今回は平成国際大学法学部教授の浅野和生先生による
『嘉納師範の教育理論』という演題で、柔道を志す人たちには
ぜひ学んでいただきたいと思うような内容でした。

柔道の創始者である嘉納治五郎師範は、
講道館長という顔だけでなく、東京高等師範学校校長、
IOC委員という顔も持つことはご存知の通りです。

そうしたなか、生涯を貫いて柔道家であろうとした嘉納師範は、
「柔道家」として生きることをどのように考えていたのか。
浅野教授は、実際に嘉納師範が残してきた著作物をまとめ、
非常にわかりやすく解説してくださいました。

ここでは、浅野先生がまとめてくださった
エッセンスだけをご紹介しますが、
お金(書物はかなり高額のようです)と時間がある方は、
実際に嘉納師範が残した膨大な著作物を、ぜひ読んでみてください。

嘉納師範は「柔道家」として生きることとして、
次のことを常日頃から門下生に話していたそうです。
1) 本を読む~有効な知識の収得、観察力と思考力を得る。
教科書以外の本については、読んで最も有益なものかを考えて選ぶ
→ただ読むだけではダメ。読んだことを理解し、自分の持っている
他の知識と結び付けて、種々思考をめぐらす。
2) 時間を浪費しない~光陰矢のごとし。
精力を無駄に費やさないこと。休息は必要だが、最も有効にとる。
どんなすき間の時間も利用して勉強する。
必要と感じ、為そうと思ったことを決行する。
これを継続する意志力が重要。
→柔道の乱取などの練習で養う
3) 学校の試験についても、心身の力を最も有効に使用する
→少しの力も無駄にせずに勉強して良い成績をあげる。
勉強すべき時を無駄なことや雑談に費やして、
夜になって急に無理な勉強をするのはダメ。

上記3つの項目を意識して生活することで、
以下のような「柔道家の品格」を身につけてほしいとしています。

1.行儀作法
正しい姿勢、整っていて上品な服装、ただし費用はかけない。
ご飯の食べ方に関しても、細かなところまで意識をする。
2.生活ぶり
堅実なお金の使い方、余らせるくらいの気持ちが必要。
質素な生活、他者のために用いる。
3.交際ぶり
言葉づかいにも注意する。表現力。他人の悪口は言わない。
有言実行、言行一致を目指す。
4.仕事ぶり
強さは正義のために躊躇なく発揮する。
技術と知識を磨き、相手を満足させる。
5.理想
名誉、利益、権力以上の高い理想を抱いて行動する。

嘉納師範は、門下生たちに非常に細かなところまで、
徹底的に指導しました。
講道館は、ある意味では「嘉納塾」であり、
嘉納治五郎の教育論の実践の場でした。
見ていただければわかるように、
特別な内容があるわけではありません。
おそらく、道場や家庭で、先生や親御さんから
毎日注意されていることだと思います。
でも、これらのことすべてを確実に行うことは
容易なことではありません。
だからこそ、嘉納師範が「柔道家の品格」として
門下生に徹底させようとしたのだと思います。

時代が変わっても、本質はなんら変わらないと思いますし、
柔道を志す方には、改めて、嘉納治五郎の目指した
「柔道家の品格」を体現すべく、
自らを省みる機会にしていただければと思います。

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(教養講座の模様、写真は浅野和生教授)

スポーツひのまるキッズ事務局 林 毅

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