先週末、全日本学生体重別選手権大会が開催され、
日本武道館で、大学生たちが熱い試合を繰り広げましたが、
大会前日には、筑波大学の菊幸一教授の教養講座が講道館で行なわれ、
各大学の監督を中心に多くの方が聴講しました。
「暴力は柔道を滅ぼす!?」というテーマで、
約1時間にわたって行なわれましたが、
講座の内容は、指導者にとって非常にためになる、
絶対に知っておきたい内容だったこともあり、
受講した皆さんは、メモを取りながら真剣な表情で聞いていました。
私が聞いていて印象に残ったことをまとめてみました。
1)人間は、暴力を振るう存在であることを認め、
その上で、人間が持っている暴力性を
「飼いならさなければならない」。
2)柔道の「投げる、倒す、絞める」といった行為は
本来“暴力”といえるような行為だが、
嘉納治五郎先生が、「技(わざ)」化し、
言語化して指導できるようにしたことで非暴力行為となった。
3)本来、柔道の修行は「形、乱取り、講義、問答」だが、
最近は、最も大切な「問答」がなくなってきてしまっている。
嘉納先生が柔道の修行の一環として行なっていた
「講義」=言語化して相手に伝えること
「問答」=相手に意見を聞くこと
をもっと大切にしなくてはいけない。
4)暴力かどうかを判断するのは、
個人ではなく、周り(世間)。
以前はよかったから大丈夫というのは、今は通用しない。
世の中の動きを見ておくことが重要。
外を見て、外の世界を知ることで、
いま、世間が暴力について、あるいは柔道について、
どんな見方をしているのかを知ることが大切。
柔道は、激しく投げあったり、相手の首を絞めたり、
暴力行為と思われるようなことをしながらも、
試合が終われば、お互いに礼をし、尊重しあうからこそ、
世界中の人が信頼し、熱中するわけで、
その柔道をやっている人が、
暴力を振るうようになってしまったら、
社会の信頼を失うことになります。
講座のテーマ、「暴力は柔道を滅ぼす!?」は
決して大袈裟なことではないと思います。
柔道に関わるすべての人たちが、いま一度、
しっかりとこのことを考えなくてはいけないと感じました。
信頼は、自らの襟を正すことから生まれます。
ひのまるキッズ事務局 林