胸が締め付けられるような、劇的な幕切れでした。
先週末に行なわれた全日本学生体重別団体優勝大会男子決勝。
国士舘大vs東海大。
先鋒戦から五将戦までは一進一退の末の引き分け。
試合が動いたのは、中堅戦からでした。
東海ポイントゲッターのウルフ・アロン選手が、
国士舘・山口智広選手に内股で一本勝ちしてまずは東海がリード。
続く三将戦も東海の影浦心選手が、国士舘の山田伊織選手に
大外刈「技有」で優勢勝ちして東海が2-0。
国士舘にとっては絶体絶命の状態。
しかし、副将戦で国士舘の大島優麿選手が
東海の竹内文汰選手を横四方固で破って1点を返し、
大将戦に望みをつなぎました。
大将戦は国士舘・江畑丈夫選手vs東海・前田宗哉選手。
高校時代からのライバルで、実力的にはほぼ互角。
引き分けの可能性が高いだろうと、誰もが思ったと思います。
実際、終盤までは、ほぼ互角の攻防(両者「指導2」)でした。
上水研一朗監督から「個人戦のつもりで戦ってこい」と言われた前田選手は、
序盤から前に出てガンガン攻め込み「守る」様子は一切なし。
見ていて気持ちがいいくらいの攻撃的な柔道。
逆に「そこまで攻めなくても…」と感じさせるほどでした。
おそらく、江畑選手と組んだ瞬間、
「守ったら負ける」と察知したのかもしれません。
たしかに、この日の江畑選手には、
そんなオーラが感じられました。
しかし、残り30秒あたりから「引き分け」を意識したのか、
前田選手がほんの少し守勢になったところに、
江畑選手が、前に出て強烈にプレッシャーをかけ、
残り17秒、前田選手に「組まない」ことへの「指導」が与えられました。
「指導3」とはいえ、残り時間は少し。
しかし、江畑選手はさらに前に出て圧力をかけ、
前田選手のクロスグリップを誘発。
その状態のまま4秒、5秒…。
前田選手が焦り気味に技を掛けたところで
「待て」がかかりました。
静まり返る会場。審判が集まり協議。固唾を飲む両陣営。
そして、静かに前田選手に4つ目の「指導」が与えられ、
「反則負け」が宣告されました。
残り時間は、わずか8秒でした。
思わず拳を突き上げる江畑選手。
崩れ落ちる前田選手。
勝者と敗者のコントラストは、
とても感慨深いものでした。
国士舘ベンチは、全員が抱き合い、喜びの涙。
鈴木桂治監督も、目を真っ赤にし、
喜びを嚙み締めている様子でした。
国士舘の優勝は、実に9年ぶりで、
鈴木監督にとっては就任5年目で初の全国制覇。
国士舘はこの日、
準々決勝で筑波大に2-2の内容、
準決勝で日大に3-3の内容で勝ちました。
いずれも逆転勝ち。
上位チームの戦いは、本当に紙一重でした。
これで、今年の学生の大きな大会は終了。
今年の各大学の主力は2、3年生が多かったので、
来年の学生柔道は、さらに面白くなりそう。
期待しています!
国士舘の皆さん、優勝おめでとうございます!
ひのまるキッズ事務局
林 毅