自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。どんな道かは知らないが、他の人には歩めない。自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。広い時もある。せまい時もある。のぼりもあればくだりもある。淡々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある。
この道がはたしてよいのか悪いのか、思案に余る時もあろう。なぐさめを求めたくなる時もあろう。しかし、所詮はこの道しかないのではないか。
あきらめろと言うのではない。いま立っているこの道、いま歩んでいるこの道、ともかくもこの道を休まず歩むことである。自分だけしか歩めない大事な道ではないか。自分だけに与えられているかけがいのないこの道ではないか。
他人の道に心をうばわれ、思案にくれて立ちすくんでいても、道はすこしもひらけない。道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。
それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。深い喜びも生まれてくる。(松下幸之助『道をひらく』)
ゴールデンウィーク最終日。例年同様出社。
お昼を食べようと会社を出ていつもの東京タワーを見た。
いつもと変りない姿。
そして、振り返ってみた。おそら改めて見るのは初めての光景だった。
でも、たぶんこの光景もいつもと変わっていないのだろう。
この道はもちろん、どちらにも行ける。でも、今までは、ただそこに東京タワーがあるから・・そっち方向しか見ていなかった自分に気が付いた。でも、目の前の東京タワーが最終目的地だということは間違いなく、ない。
方向転換・・ふざけんな。
引き返す・・とんでもない。
男が一度決めたことは絶対にできるまで、やる!
でも、それで本当に良いのだろうか? それで他人を不幸にしているのではないだろうか・・。
会社に戻り一人、経理室で断捨離を決行しているとき、創業から1年でこの世を去ってしまった故・弊社経理部長(私の大先輩)の手帳を見つけてしまった。
私には何も言わない人だった。
会社立ち上げてとんでもない裏切りに会い、いきなり大ピンチの時も『永瀬さんは大丈夫!会社は大丈夫!」と言ってくれた、父の葬儀の時も狼狽えていた私を裏方で支えてくださった。
我が道はいったいどこに向かっているのだろうか・・。目的地は目の前(東京タワー)にあるわけではなく、もしかしたら、逆方向に行って迂回してたどり着けるのではないだろうか??
手帳に書かれていたメモを発見した。そこには、何も言わなかった経理部長の、言えなかった一言が刻まれていた。もしかしたら、言わなかったのではなく、私が聞く耳を持たなかったのではないだろうか・・。
申し訳なくて涙が出た。。。
私しか歩まない道。
お陰様で、事業は軌道に乗りつつある。と言ってもまだまだ盤石ではない・・。
そんな中、歩むしかないその道で決して忘れてはいけないことがここにはあった。
何のためにその道を歩くんですか??
未だ我が道を思慮中。でも、少なくても今の私なら、上記のメモは残させない。10年かかりました。すみません。
いまから、ここから、やるべきことを、ただひたすら、愚直に、黙って我が道を。
永瀬義規