アスリートからのメッセージ

第2回 須貝等さんインタビュー

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須貝等さんプロフィール


北海道出身。
柔道世界選手権95kg級で85、87年の2連覇。
東海大第四高―東海大学―新日本製鉄
現在は娘2人と息子1人を持つ父親としてまたビジネスマンとして活躍中。

■まずは柔道を始めた頃のお話をお聞かせください。


はい。体はどちらかといえば大きい方でした。ポッチャリしててね。
自分の場合は中学校から柔道を初めました。野球がやりたかったんですけど、友達が走るのは嫌だというので、じゃあ走らなくてもいい柔道にしようと。

■やはり友達と楽しくやるということがきっかけだったわけですか?


そうですね。北海道の田舎だったから同級生も少なかったんですよ。
だから友達の影響というのは確かにあったと思いますよ。
それと僕、元来負けず嫌いな性格なんですよ。勝ったり負けたりするなかで、あいつには負けたくないなという気持ちがどこかにあって、友達と一緒にがんばって競い合ったのが良かったんでしょうね。そのうち楽しくなってきて、それがきっかけといえばきっかけです。

■中学校時代から世界チャンピオンになるんだ、と意識されていましたか?


やっぱり楽しくなってくればなんでも一番を目指したがるものです。
楽しいから夢が持てる。北海道から出たことはなかったけど、一番になりたいなあ、とおぼろげに思っていました。
それで高校に入ったら、日本でも最高レベルの先輩たちがいて、2年生になれば自分も全国大会でタイトルを取ったり、表彰されたりもした。
もう少し頑張れば日本一、いや世界一もあるなと意識できましたね。そんなに遠くないんじゃないかなと。僕が思うにはなんでも目標が大事。
苦しさと目標を天秤にかけて、目標があれば苦しくても耐えることが出来る。ただ『走れ』って言われて走っても目標がないと面白くないし成績ものびない。『あと何kmでゴールだ』とか『あと何秒でこの成績だ』とかわかるから頑張れる。それは何事でも一緒だと思いますね。

■今の子どもたちを見てどう思われますか?


僕らが子どもの頃だって、『昔の子はこうだった』って言われましたからね。
それはいつの時代でも同じだと思いますよ。時代背景が違う。
僕らは子どものころ仮面ライダーカードなんかで遊んだけれど、もっと昔はそれがなかったわけでしょ。今ならゲームがあったりしてね。そればっかりになるから言われるんです。でもそれは時代背景というのを考えないといけないですよね。その時代にあった育て方を親が考えて実践していかないと。
子どもを導くやり方ですね。だからといって、時代がこうだから、と親がそれを言い訳にしちゃいけないと思うんですよね。遊ぶにしても時間とかメリハリをつけて、時間守れなかったら本気で怒る。できたらほめる。それもまたメリハリです。

■ということは親の教育が必要ということになってくると思われますか?


先生が本気で怒るのが難しくなってきていますよね。反面、親は子どもが可愛いと思うのに、学校に全部任せている。そのくせ学校でなんかあったら文句を言いにくる。そういう人が増えましたよね。
僕らの小学校には、自転車に乗るのに免許があったんです。悪い乗り方をすると減点されていって最後には自転車を没収されちゃう。

■免許じゃなくて自転車を、ですか?


そう。没収されたら家に歩いて帰るんだけど、親に言えなくてね。
学校で怒られて、また家でも怒られると思うと言えない。でも『自転車どうした?って言われると正直に言わないといけない。案の定こっぴどく怒られて、それで親と一緒に学校に謝りに行く。
でもそれが普通だった。今は逆になっている人もいますもんね。
どうしちゃったのかな、と思いますよね。甘いというかね。子どものためを思えば叱る時は叱る。うちは女の子が中学生になっても悪い事をした時は殴っていましたよ。それでも今は友達みたいになっていますからね。素直に育ってくれたんじゃないかって思いますね。
親が『子どもにこれを言ったら傷つく』とか気を使う人もおかしいと思いますよね。家族の中でそんな気を使ってどうするのって。今、僕が親になって、まあ子どもの頃に親にガミガミ言われたあのときの親の気持ちがよく分かりますよ。

■小学校からスポーツを始める、ということについてはどのように考えられますか。


僕の場合は中学校から柔道を始めて、体はもちろん心も鍛えられました。
どんなに辛くても目標があればがんばることができる。
その達成感が得られて成長するとか、苦難から逃げ出さない精神力を養うのにスポーツは最適だと思います。
それでも親が子どもに押し付けてはいけないと思いますね。
子どもがやりたいと思う事があれば導いてあげる。その導きが親の仕事だと思います。それには普段からコミュニケーションをうまく取ることが大事ですよね 。『ヤンキースの松井選手って凄いね』『うん、アメリカでこれだけ選手がいるなかでね』とか『お父さん、サッカーってどう』『外国の誰それという選手はボールをこんなふうに蹴って凄いね』とかそうやって子どもが興味を持てるように会話を通じて楽しく導くべきなんです。
ただやれとかとにかくやれというのではなくてね。それを親がきっちりとやる。先生に任せてしまうのではなくね。

■やはり柔道がオススメでしょうか?


いや何の競技でもいいんです。やった努力が心を鍛える。苦しい思いをして、楽をしたい、近道を歩きたい、と誰しも思う。
今仕事をしていて、僕らでも思いますよね。でも目標を作ってそれを乗り越える。順位とかは、これは仕方がないですよ。たまたま仕方なくつけられるものであって、それよりも頑張る事に意義があるんですよね。

■須貝さんの教育論は、やはり3人のお子さんを育てる中で培われてきたのですか?


私だって、最初は子育てなんかしたことありませんでしたからね。見よう見まねでこれがいいかと思ってやってきましたけど、でも間違いは誰しもするんです。 子どもも先生も親もする。あー間違ったと思ったら、修正できる。それに気づいて修正できる親になりたいと思いますよね。

■実際お子さんを育ててきてどうでしょうか?


まあ色々話しましたけど、家では親バカで甘い部分も多々あります(笑)。
それでも素直に育ってくれていて、それは良かったなあと思っていますよ。